攻略対象の難易度がSSS+でした
凝りの正体
「どうだ、身体は軽くなったか。」
「ああ、おかげで羽根のように軽くなった! オレもまたマダラを揉みほぐしたい、交代ぞ。」
「……そんなに凝っていないと思うが……ただ、その気持ちだけでも嬉しい。頼む。」
ついに来た、計画第二段階始動の時が!
「最初はうつ伏せぞ〜」
「按摩にうつ伏せ以外などあるのか?」
「まあ任せておけ!」
腕を前に伸ばしうつ伏せに寝そべるマダラの髪を左右に分けてその肩甲骨に親指を添える。
……え? いやこれは……? ちょい待ち。
「……マダラ、めちゃくちゃ固いぞ。オレよりも固いのではないか? これのどこがそんなに凝ってない、だ。」
「……うん? そうか? いつもこのぐらいだが。」
親指に力を込める。ぐりぐりとほぐそうにも手応えがほとんどない。いつもこんな凝りに凝り固まった状態でいる……!? オレほどは書類仕事はしておらんはず、とはいえマダラの普段の仕事はあまり知らない。ただ若者の鍛錬には別の者がついていてマダラ自身が手合わせということはないとは聞いた。
「一体どんな生活をしておったらこんなに硬くなるんぞ?」
「確かに最近はあまり身体を動かしていないな……。」
ん、身体を動かしていない……ならばまぐわいで身体を動かそう、これぞ!!
の、前に流石にこんなに凝り固まっておる背中はほぐさねば。オレとて指の力なら自信がある。この凝り……全てほぐし切って見せる!
「手加減しているのか? もっと強くてもいいぞ。」
えっ? 結構力入れているつもりだが……マダラを気持ち良くさせるには、もっと本気を出せということか。面白い……!
最大出力で肩と首を入念に揉みほぐすが、なかなか柔らかくなる気配はない。マダラもオレの時のような声を出しておらん。……つまりは更なる力が必要か。
マダラの肩から手を離し、その手を合わせて深く息を吸う。
……仙人モード!!
これならば少しは効いてくるだろう……再び親指を肩に強く押し込みぐりぐりとほぐす。……く、どういうことぞ、仙人モードでもマダラは声ひとつ出しておらん……!
どれぐらい時間がかかったことだろう、ようやくマダラが声を出した。
「お、そこはよく効く。」
やっとマダラの身体感覚に届いた……!! しかし何というしぶとい凝りぞ……仙人モードまで使ってようやくとは……。
「ちと凝りすぎぞ、どうしたらこんなに硬くなるのだ。」
「んー……思い当たる節は……最近よく読書をしているくらいか……。」
読書。マダラのことだ、真面目な本なのだろう。
「マダラが最近読んでいるのはどんな本ぞ」
「題名が少し長いんだが、今日読んだのは"敵の手に堕ちたくのいちは快楽地獄を楽しんでいます"という本だな。」
ちょい待ちなんだその題名は。
「……マダラそれはそのいわゆる、エロ本……なのか?」
「本屋では官能小説と書いてあった。その前に読んだのは確か"好敵手だと思っていたのは俺だけでした〜戦争中の情事〜"だな。」
待て、待て早い、理解が追いつかん。
「つまりはそれも官能小説か? 聞いたところでは男同士……のような題名だが。」
「そうだ、男色の本だな。お前が最初に貸してくれた本について詳しく知っておこうと」
「それはつまり男色に興味を持ったと!?」
肩を揉む指に力が入る。まさかあのマダラがそんな本読んどるなんて思わんだろう!?
ていうかそれ普通に書店で買った? マダラが? それは大丈夫なのか?
「その、それらの本を買ったことは……」
「書店の主人しか知らん、きちんと表紙など見えんよう風呂敷で隠して運んでいる。心配無用だ。」
少しほっとしたが、という事は、そういう本ばかり選んで読んでおるという事は、まぐわいに関してもしかしたら今結構な知識を持っている……?
「男色というよりは……まあまぐわい全般だな。柱間お前、いつかに俺とまぐわいたいと言っていただろう。」
覚えてたァーー!
それはつまりオレの望みを叶えようと自ら勉強を……? もし仮にそうだとしたらこの強固な凝りをほぐした後……もしかしたら……!
「お、覚えておったか、今になると少し恥ずかしいが……マダラのことが好きだからそういう気持ちもまた」
「うん? 好きだからどうしてまぐわいたいになる。」
えっそこは繋がっていない?
「貸した本に書いてあったろう、互いが好きになり想いが通じ合うと恋仲になり、恋仲になった男女は接吻やまぐわいをする……と。」
「ほう……なるほど、そういう論理で繋がっていたために柱間はあの順番で本を貸してくれていたわけか。」
理解来たァーー!
「そう! その通りぞ! だからマダラのことを恋仲同然に好きだからこそオレはまぐわいたいと……」
「俺が読んだ本には好き同士というのはあまり見られなかったが……ただまぐわいとは意識が飛ぶほどの快楽を産むものだとは理解した。柱間は俺にそれを体験させたかったのだろう。」
んんん何か引っかかるものがあるが話はまぐわう方向に向かっておるから一旦この波に乗ろう!
「その通りだ、本でわかったと思うが男同士とて気持ち良くなれる、それをマダラと共に体験したかったんぞ。」
「そうだな、共に新しい体験をするのは悪くない。だがもう少し時間をくれ。俺の知識はまだ柱間には及ばない。俺はあくまで対等にお前とやり合いたい。」
戦争中みたいな言い方しないで。
「オレはいつでも構わんぞ、それにそれだけ本を読んでこの凝りになっているならば相当な数読み込んだのだろう。」
「そうだな、ざっと30冊くらいか。」
多くない?
「だが何冊読んでもまぐわいそのものは理解出来たが、柱間の言う好き同士から恋仲になりまぐわうという、好きという感情を起点にしたまぐわいに関してはまだ理解が浅い。」
そりゃエロ小説ばかり読んどるからぞ。
「官能小説はまぐわいそのものに焦点を当てたものだから当然ぞ。成人向けろまんす小説を読めば理解が深まるはずだ。……それとも今からオレがマダラに教え」
「なるほどろまんす小説だな、帰りに早速買い求めよう。」
それは今日はお預けという……!?
「んん゛っ、今からオレがマダラに身体でもって教えることもできるんぞ……? その意識が飛ぶほどの快楽を。オレは早くマダラを気持ち良くさせたい。マダラのことがそれだけ好きだ。」
「俺も柱間が好きだ。だから柱間の望みは出来るだけ叶えたいと思っている。しかし不十分な知識のままでは」
「大丈夫ぞそこは問題ない必要な事は互いに互いが好きだという感情ただひとつそれさえあればいいんぞ!」
「柱間はいいかもしれんが俺はきちんと学んだ上で望みを叶えてやりたい。」
くぅっ、ようやく話が噛み合うかと思いきや何というかこの……頑固者ぉ! ……でもそんなマダラも好きぞ……。
「……一応……前提の確認をするが……、マダラはオレの事を男女の恋仲と同じように好きだと思っておるか?」
「男女と男男では大前提がまず異なるだろう。柱間のことは好きだが男女のそれとはまた別だ。」
あれ、別なの?
「ならマダラの好きはどういう好きなんぞ。例えば気がついたらオレのことを考えていたり、オレのことを考えたら胸がドキドキしたり、抱きしめたくなったりすることはないのか?」
「……そうだな、ふと柱間は何をしているだろうかと考えることはよくある。柱間のことを考えると気分が高揚してまた戦場で刃を交えたいと思うしその強靭な肉体にひとつでも刀傷をつけることができたらと……」
「ちょい待ち、何故戦場の話になるんぞ。和睦して今平和、わかるか。刃を交えるとかもうないぞ。というかオレの身体に傷をつけたいのかマダラは。それは好きなのか?」
「屈強な男にひとつでも俺の刃が及んだ痕が残る……それほど嬉しいことはないだろう。」
待て何の話をしていた? 官能小説読んでたら肩めちゃくちゃ凝りました、からのまぐわいに興味あり、からのオレがかつて言ったことを実現したい、つまりオレとまぐわうつもりがある、という文脈から何故刀傷に話がひっくり返った?
「……まあ、この平和な世においてはただの夢想だ。気にするな。」
「……うむ聞かなかったこととする……。」
……結局マダラの好きが何なのかわかっとらんではないかァーー!!
しかし肩の凝り最初と比べたらだいぶ柔らかくなってきたぞ。首筋をもう少しほぐすか……。
「だが柱間、俺はお前が好きだ。これからもずっと共にいたいのは本心だ。柱間と共に過ごす時間が好きだ。まぐわいはもうしばらく待っていてほしいが、共に新たな経験をしながら歳を重ねていきたい。」
……っそれはもう恋仲の好きと同じぞ……っ! 同じなんぞマダラ……!!
「オレとて同じ気持ちだ、そしてオレはこのマダラへの好きという気持ちは恋仲のそれと同じだと思っている。だからマダラも同じではないのか。恋仲として」
「いや、俺の気持ちはもっと深いものだ。だがそれを言い表すに相応しい言葉がなかなか見つからん。柱間、お前のことは誰よりも大切に思っている。そうだな……母が子を愛するのと似ているが、お前は子どもではない。」
それは恋を超えてもはや愛! 愛で合ってる! そこ!
「恋愛の話ばかりしていたオレが悪かったようだ、恋に落ちた者たちは愛情を深め合い、やがて夫婦のように互いを愛するようになる。オレ達も夫婦のようだと言って笑っただろう。それは真実の愛があるからこそではないか?」
「夫婦の間に愛……? 夫婦とは子を産み育てて巣立つのを見守る者たちだろう。子を育てるという共同作業を通して互いのことをよく知り阿吽の呼吸で動けるほどに信頼を深め合うことはあれどその間に愛とは?」
また変なとこの知識欠落してたァーー!!
落ち着け落ち着け柱間、夫婦を出したのは失敗だったぞ柱間。愛に話を戻せばまだ軌道修正が利くはずぞ!
「夫婦の話は例えだ忘れてくれ、つまりはオレとマダラの間には愛があると言いたかったんぞ! そして愛とは恋仲よりも一段階進んだ関係性の間で育まれるものであって、マダラの言うもっと深い気持ちとは愛のことだとオレは思う。」
「ふむ? 愛というと親子や兄弟のそれしか浮かばんが、恋仲になった者もゆくゆくは愛し合う関係になるという事か。これもまた本で調べてみよう。」
マダラに本を選ばせたらまたどんなものを手にするかわからん極めて一般的な愛について学んでもらわなければ……!
「ではオレが良さそうな本をまた見繕って貸そう。」
「あー……そこ、凝っているな……気持ち強くしてくれ。」
既に仙人モードで全力出してますが。
……火事場の馬鹿力ッ!!
ぐりぃっと渾身の力で「そこ」を揉みほぐす。
「あぁ……気持ちいい……。」
全然色っぽい声でなくむしろ弛緩し切った安心したような声なのに「気持ちいい」という言葉だけに反応しかけてしまう自分が悲しい……。
いやこんなに凝っていなければもっと早く仰向けにしてまぐわいの実演が出来たんだが……。
「しかしこんなに肩が凝るとは何日何時間本を読んでおったのだ。」
「あー……一日10冊を一週間くらいだな……。」
む、30冊と計算が合わんぞ……。
「官能小説以外も読んでおったのか?」
「そうだな……まずまぐわいとは何かを学ぶために医学書から入ったがあれは分厚くてな、つい性器以外の部分も読み込んでしまった……。」
医学書というと扉間の部屋にある鈍器代わりになりそうなほど分厚いあれのことか……?
「先の公衆衛生の改善をきっかけに一度医学書を全て読んでみたい気持ちになってしまったのが沼だったな、専門用語も多いし身体の中というのは思っていた以上に精密に出来ている。俺もお前も、こうして生きている事は身体中の様々な器官が己の役割を遂げ続けているからだ。まるで里の民と里との関係だ。」
ただでさえ脱線してるのに更に脱線しないで。
「つまりこうしてオレたちが共にいられるのは単に共にいたいという気持ちだけではないという事だな。マダラの知識欲には恐れ入る。」
そろそろ強くしてくれとリクエストがなければ仙人モードを解いても良さそうだ、だいぶ凝りをほぐしたぞ!
また両手を合わせて仙人モードを解除する。うむ、指が入る。大きな肩甲骨の上にある筋肉を手のひらでぐりぐりと揉みほぐす。
「あぁ、もう少しそのまま……按摩をしてもらうのもたまにはいいな……」
「そうだの、次はここまで凝る前に言ってくれ。またこうしてマダラと語りながらお前の身体をほぐしたい。」
「……いや、そもそも凝らなければいい話だ。最近鍛錬を怠っていたからな。少しは暴れねえと。」
「マダラが暴れると言うと洒落にならん、普通の鍛錬にとどめてくれ。時には相手になろう。」
「……ガキの頃は柱間の方が体術が上だったな。戦場では刀が中心だった。……今の柱間と本気で体術をやり合ってみたいものだ。」
「それは……下手したら里がなくなる。やめておこう。」

