知られてはいけない(扉イズ版)
理屈の限界
これがほしい、中に入れてかき乱して欲しい、後ろの穴に指を挿れながらその中は分泌液でとろとろに濡れていて下履きを濡らしていた。相手が誰などともう考えていなかった。ただのアルファ、俺の欲求を満たしてくれる誰か。誰でもいい、この疼きをぐちゃぐちゃに激しく突いてくれれば。
「んっ、は、……っあ、んむ、んっ……」
下履きを下ろして局部を露出させる。愛しいそれから口を離して自らの孔をそれに押し当ててゆっくりと中に埋めていく。ああ……欲しかった、これが、もっと奥まで……。
その誰かは、俺の腰を掴んで一気にそれを奥まで挿れた。
「っぁああっ!」
立ったまま背後で腰を打ちつける誰か、奥に突かれるたびに出る声を垂れ流しにしながら快感で足がガクガクと震える。その誰かがしっかりと腰を掴んで支えていてかろうじて立っていられたが手は地面についていた。暴力的な快感に夢中になって自ら腰を動かしながらより深いところに届いては自分のそれから白濁液が飛び散る。
「あっ〜! あぁっ! あ゛っ!! もっ、あああっ!!」
誰かが何か言っているのが聞こえた気がしたけど今はその快感を少しでも多く拾おうと必死で誰がなんて言っているのかもわからない。
時折奥で止まって中にじわりと熱いものが広がるのを感じてはまた始まる律動に喉を震わせ続けた。
どのくらいそうしていたのかわからないほど出入りする熱い塊に翻弄されながら誰かが俺の名を繰り返し叫んでいることに気がつく。
「イズナ様っ! 薬を! イズナ様……っ!!」
誰だ……薬? 薬ってなんだ……。
「ぅあ゛! あ、ぁああっ! きもち、い゛っ!」
望んでいた、ぐちゃぐちゃにかき回されるのを、ガンガン奥まで突かれるのを、アルファに孕まされるのを。俺の意識は後ろの孔に集中していた。
でもその声は必死に俺に呼びかけ続けていた。……くすり、……薬? そんなに大事な……そうだ、薬。丸薬。なんだこの状況、背後で俺に突っ込んでるのは誰だ。思考が戻ってきている……無意識、に、俺は、誰かに?
目を開けると目の前に、兄さんが手配したオメガの忍が涙目になりながら丸薬を目の前に差し出している。
「あっ、くす、りっ! んっ! くちにっ、ぁあっ!」
ぐちゅぐちゅと湿った音に肌がぶつかる乾いた音と俺の声、そして目の前のオメガの叫ぶ声。口を開いたら丸薬が口の中に入れられた。喘ぐ合間に何とか飲み込む。あとふたつ飲まなければ発情期は……っ!
背後の誰かはそれを確認したのか、最後に奥深くに熱い物を放ってぬるりとそれを抜き、腰を支えていた手をゆっくりと離した。
俺はその場にへたり込み、その人物が誰なのか確かめようとしたが身体にうまく力が入らない。
去っていく気配。多分このオメガが一部始終を見ている。今確認出来なくても良い。確か戦をしていたはずだ。……そうだ、扉間を討つためにこのオメガと一緒に行動しながら戦っているときに発情期の兆候が……待て、まさか、今立ち去った男は……。
「……悪い……、助かった……のか、わからないけど……。」
「大丈夫……かわかりませんが、丸薬は3つ飲んでいます。しばらくしたらきっと落ち着くので……。」
相変わらず身体は熱いし呼吸も心拍も乱れに乱れている。誰かの性器が入っていたそこはまだ刺激を求めてひくひくと疼いていた。……これが、オメガの発情期……。
少しずつ思考力が戻ってくる。発情期中は丸薬ひとつじゃとても戦えないことはよくわかった。戦い方を変えなければならない。扉間の相手は発情期中は無理だ。二週間だったか、その期間中は少なくとも、直接一対一でやり合うのは避けないと。
時間の経過と共に身体の疼きは少しずつ消えていった。しかし真っ暗な森の中、戦場からも離れているらしい。落ち着くのを待つ前に服を整えて兄さんたちの場所に戻らないと。
これだけ月が高く上がっている、もしかしたら戦はもう終わっているかもしれない。きっと兄さんは心配してる。
尻から溢れ出る生温かい液体をどうするか悩んで、どうにもならないと下履きを全て上げて身なりを整えた。
「兄さんたちの場所、わかるか?」
「案内します。」
オメガの後をついて歩く。……中出しされている、妊娠している可能性は捨てきれない。……避妊薬も必要だった。発情期は薬で抑えるつもりでいたから避妊薬もいらないと思っていたけど考えが甘かった。こんな最低なタイミングで発情期が来るなんて。……背後のあれは、考えたくもないけど。可能性として一番高いのは……扉間だ。
千手の子を孕んでしまっていたらそれこそ最悪だ。しかし、扉間だったとしたら俺を斬る好機だったはずなのに何故そうしなかったのだろうか。アルファだから発情期のフェロモンの影響をもろに浴びて考える前に身体が動いていた?
あの男が簡単にそうなるとは思えない。オメガを連れていてもあいつは普段と変わらない強さで互角の戦いが続いていた。
「イズナ!!」
兄さんの声が前方から聞こえる。俺は兄さんにどう報告するべきか。完全に失策だった。反省すべきところは次に活かすべきだ。だから誰か……恐らく扉間、にやられた事も……言うべきだろう。
……兄さんに失望されるだろうか。やはりオメガは駄目だと、戦線から外されるだろうか。……何も文句は言えない。どれだけ努力しても、オメガという性から逃げることは、出来ない……。
柱間たち千手が撤退してから兵達を帰らせて俺はひとりでイズナを探しに行った。険しい崖の下からフェロモンを感じて飛び降り、しかしその先にあるフェロモンはより強くなっていく。一体どれだけ……発情期になったのは間違いない。イズナは無事なのか。扉間はどうなった。戦場からかなり離れたところで、強まるどころか急激にフェロモンが薄くなっていった。チャクラは感じるから生きている。薬を飲んだのか? ともかく、行かなければ。
「イズナ、どこだ!」
呼びかけながら森を進むと、ようやくそのチャクラがはっきりと感じられた。オメガの忍も一緒のようだ。
姿が見えてイズナに駆け寄り肩を掴む。
「イズナ! 無事……のようだな。……よかった。扉間は?」
イズナは答えにくそうに目を逸らす。
「……わからない。このオメガが一部始終見ていたはずだ。屋敷に戻ってから話を聞こう。外では……どこに誰の耳があるかわからない。」
……あのフェロモンの強さは間違いなく発情期のものだ。それが扉間がいない今になって薄まった。……まさかイズナは。
「……戻ろう、ともかく無事でよかった。」
屋敷に戻り、オメガの忍から一通り話を聞き終えた。あの扉間がイズナを殺さなかったことが意外だが、……犯されてしまったとはいえ、命が無事だったことが何よりの救いだった。そして他の忍が近くにいなかった事も。
あのフェロモンはこのオメガの忍のものだと説明すれば皆納得するだろう。扉間とやり合ううちに戦場から離れていき、暗くなって扉間が撤退したと……説明するとして。
「……二週間は必ず丸薬を3つ飲む事、あと扉間と一対一の戦いはその間避けろ。イズナが不利だ。」
しかし扉間の方がイズナを斬ろうとしてくる可能性は高い。扉間はイズナが発情期だとわかっている。薬の副作用までは知られていないかもしれないが、千手の中でイズナがオメガでしかも発情期だと広がればイズナは間違いなく標的になる。
「でも俺が戦場に行かないわけにはいかない。多少鈍くなっても俺がいないと統率が乱れる。役割を変えて、先陣で指揮ではなく後方での指揮に変えたい。それなら良いだろ、兄さん。」
「その案を取ると、扉間をどう抑えるかが課題だ。なるべく腕の立つ者を3人、対扉間用に最前線に配置したい。その分後方兵力が落ちるが、そこを指揮できるか。」
「出来るか出来ないかじゃない、やる。やるしかない。俺に任せて。」
後方での指揮であれば命の危険は少ない。ただ、今まで先陣にいたイズナが後方に配置となると他者が何と言うか……。まあ、黙らせるしかない。
「後方は任せる。頼んだ、イズナ。他は俺が何とかする。」
フェロモンが薄まりイズナが正気を取り戻したところで俺もまた腰を止めた。腰の支えを失ったイズナはそのままへたり込み、後方の俺を確かめる力はないようだった。
一部始終をオメガの忍が見ていたが、うちはの中でイズナがオメガだと黙されているのであればこの事も広まることはないだろう。
服を正してゆっくりと後退り、戦場に戦の気配がないのを確認すると、千手の屋敷に戻った。
帰った途端に兄者から問いただされたが、ずっとイズナと刃を交えていた事にした。その時はイズナがオメガで、発情期で、フェロモンに当てられたなどとは口が裂けても言えなかった。
しかし次回以降の戦ではイズナに対してどう戦えば良い。また今回のようなことが起こらないとも限らない。そんなことが続けば指摘されるだろう。いくら戦場から離れたとてそこに残っている匂いは消せない。うちはが連れてきたオメガの忍も、最初はアルファである俺たちを撹乱するための策かと思ったが、あの様子を見るにイズナのフェロモンを誤魔化すための要員だ。
それを軍議の場で口にするべきかどうか、その晩考え続けた。正直に全て話せばあの時イズナを斬る選択をしなかった事を責める奴らは必ず出てくる。
俺自身どうするべきかあの場で悩んだ挙句、イズナに選択肢を与えていた。何故そんな事をしたのか思い起こしても不可解だ。積年の敵が弱みを見せたならばその隙を突くのは好機のはずなのに、俺の中にあの状態のイズナを斬る選択肢はなかった。捕虜にすると口にはしたが、イズナを千手のアルファやベータの慰み者にするつもりはなかった。イズナとてそのような扱いを受ければ発情期が終わった瞬間に舌を噛みちぎって自害するだろう。
合理的で効率的に戦をするべきだという立場を崩してこなかったが今日のイズナに対する行動は完全に合理性から逸脱していた。
フェロモンのせいだと言い訳することはできる。しかしそれだけではなかった。残っている理性で俺は判断して選択肢を提示して薬も飲ませて、そして最後にはタカが外れて本能のままにイズナを犯った。
……恥ずべきことだ、伏せなければならない。しかしこの先はどうする。もしイズナが戦場に現れなければ千手は今日失った分を取り戻せるほど有利になるが、うちはがその判断をするとは思えない。
それとひとつ大きな懸念があった。イズナの中に何度となく子種を吐き出している。万が一それで妊娠していたら……イズナはどうするつもりだろうか。憎き敵である俺との子など産みたくなどないだろう。腹がでかくなる前に中絶するかもしれない。
そう考えたときに胸に不快感を覚えていた。何に対してだろうか。イズナの妊娠の可能性なのか。中絶に対してなのか。子種を中に出し続けた己に対してか。
あの薬、3つ目を飲んでからフェロモンが急激に減った、という事は3つ飲まないと意味がないという事だろう。そして今日は一騎打ちとなったがそれまでのイズナは陣頭指揮を中心に動いていた。戦いの場では、相変わらずの強さを見せていたが幾分か動きが鈍っているようにも見えた。
……薬に副作用があるのだろうか。そして今日は俺を討つ為に動きを軽くしようと薬を3つ飲まなかった。結果として動きは鋭くなったが発情期に?
ひとりで悩むのは時間の無駄だ、客観的な視点を入れなければ俺ひとりでイズナをどうするのか判断は出来ない。……兄者にだけは、明日伝えよう。ありのまま全てを。
「……すまんが、話を整理させてくれ。イズナが隙を見せたがお前は斬らなかったのだな? それはイズナが万全の時に討たなければ勝ちとは言えないという美学ではないのか。」
兄者は額に手を当てながらこちらを見る。
「……俺にそんな美学はない……と思っていたが、行動だけ見ればそうなのかもしれない。」
「うちは一族は全員アルファの筈だが、イズナは何故オメガなのだ。普通に弟としか聞いとらんが。」
「特異体質ではないかと思うが……だからこそうちはの中でもイズナがオメガだとは知らされていないと考える。」
「それでお前はそのイズナとまぐわったわけだな。もし妊娠していれば……」
「それはマダラとイズナだけで処理されるだろう。恐らく産まれることはない。」
兄者は膝に手をつき、真剣な眼差しを向ける。
「もし妊娠していれば、それを機にうちはと手を組む交渉をする。イズナと扉間の子だという事も場合によっては公表する。」
「……イズナがオメガだと、公にするのか。」
「子は鎹と言うだろう、両家の間に子を成せばその子は間違いなく和平への架け橋となる。つまりは、また同じ状況になったら、お前はイズナを抱け。」
真剣な顔でそんな事を言われても。イズナに対しては敵として敬意を持ってはいるが恋慕や愛情はない。むしろ互いに好敵手と考えている……筈だ。
そんな二人の間に子が産まれるとなっても、イズナ側が許さないのではないか。
「……恐らくだが、イズナはもう二度と今回のような隙は作らない。頭の回る奴だ。二度目はないぞ兄者。今回妊娠していなければその案は諦めろ。」
可能性の話ばかりでスッキリとしない。全ての物事は整理されて判断ができる筈なのに整理するどころか余計に訳がわからなくなっていく。
俺は一体何を考えて何をしたいのか、自分でも理解できない行動をしたのは初めてだった。
